毎秒が生きるチャンス!


ランスの自伝であるただマイヨ・ジョーヌのためでなくとその続きである毎秒が生きるチャンス!を読んだ。


「ただマイヨ・ジョーヌのためでなく」はガン発病から回復、TDF総合優勝まで、「毎秒が生きるチャンス!」はそれから5連覇までのランスの身に起こった出来事と変り行く自身のおかれた

環境・自分自身について描かれたものである。


 この2つの本を読むとランスのデタミネーション(=勝つという意思・精神力)の強さが印象的である。

 彼のこの勝利への執着力は不幸な幼少生活での困難・苦労をベースとして形成されたのがこの自伝を読むとよくわかる。

「ただマイヨ・ジョーヌのためでなく」ではガンとのたたかい、闘病時に味わった不遇を全て起爆剤として1999年のツールでの総合優勝までを描いたサクセスストーリとなっているのだが、「毎秒が生きるチャンス!」ではその後のランスを描いている。ランスは自転車選手として、また家族を支えていくため、さらには自身をより勝利のためにコンセントレートしていくためのネタを起爆剤としてかき集めてようにして身もだえするように勝ち進んでいく様が興味深い。

 ツールドフランスでの連覇、という並大抵のものではない実績を上げるためには並大抵でない集中力・執着心が必要である。この異常な心理状態を長年に渡って継続させるための人格というのも当然必要となるのではないだろうか。

 「シェリルはすごいんだ、僕のために料理を作ってくれるんだぜ」

このセリフがランスの全てを表しているのよ、と嫁さんが言っているのだがまさにそのとおりだと思う。

 子供は別として全編に渡ってそうなのだが、「僕」が何かを妻であったキークにする描写よりも、キークがいかに献身的に尽くしてくれたか、という描写がはるかに多い。

F-1などの他のスポーツでも同じような選手を見るが、不世出のドライバーであるアイルトン・セナシューマッハも周辺に対して徹底的な忠誠・信奉を要求し、また回りからそうして支えられることですばらしい結果をあげてきている。その結果有能なスタッフが周辺に集まっている。

 アスリートやスポーツ選手である限り、記録や勝利を目標としていくのは当然のことだろう。

プロとして生活していくためにはその集中力や執着心をいかにして維持していくかがメンタル面での大きな課題であると思うが、ランスのようにいかに以下に日々の思いを執着力の燃焼剤として昇華できるか否かが長期間活躍し大記録を残せるプロ選手となれるかどうの資質を分けるのであろう。

そのように考えると夫と対等の関係でいたかった、普通の夫婦のようにありたかったキークとの破局は必然だったのかとも思う。