ラフライドを読んで

ラフ・ライド―アベレージレーサーのツール・ド・フランス

ラフ・ライド―アベレージレーサーのツール・ド・フランス

ポールキメイジの自伝「ラフライド」 を読んだ。

アイルランドに住んでいたごく普通の青年のプロロード選手生活を描いたものである。

彼はプロロード生活において2度のツールドフランス出場を果たし、4年にわたって欧州のレースを走り華々しい活躍をするわけでもなく引退した。

彼は家庭や地域柄といった社会的制約から出た宗教的道徳観に縛られ、行動様式も理性的・合理的ではない。選手生活時代にかたくなにドーピングを拒み続けたのも自身に確固たるポリシーがあったからではなく、ただただ無知からくる恐怖心のためだけ

だったようである。

 ランスと違い、有能なスタッフや知人に恵まれていたわけではなく、また知人も回りにいなかったためか練習はおろか走った後の体のケアもおろそかになりがちだったようである。

 自伝が日記風なことでよくわかるが、社交性のなさ、自信のなさ、精神力の弱さから悪循環に陥っているようだ。

 逆説的にいえばあそこまで練習やケアも体系だててするこなく、優れたスタッフやチームに恵まれずに走れたことを考えると基礎身体能力には驚くべきものがある、と考えるべきだろう。

 誰もがランスのような能力を持って生まれるわけではないが、またそれはただ身体能力だけで培われたものではないのだというのを「ラフライド」は教えてくれる。