F-1の思ひ出 ~その3 ウイング・カー

 前年のロータス78で既にウイングカーというコンセプトは世に出ていたのだが、1978年を圧倒的な力で席捲することになるロータス79は最初はミステリアスな紹介のされ方をAUTOSPORTS誌上でされていた。

 ドキュメンタリータッチな連載物、という形で新しい空力について解説するというものがAUTOSPORTS誌上にあった。

 そこではC・チャップマンが「陸上走者はカーブでも直線と同じ速度で走ることができる。なぜ我々の作る車ではそれができないのか?」といった命題をロータスのR&Dで熱く説きながら前年度のマシン、ロータス77のシャーシのねじり試験を実施していくシーンが描写されていた。

 確かこの連載ではウイングカーは直線で遅かったことを挙げて同じ頃F-2で活躍したマーチ782の底が空いているサイドポンツーンを紹介し、これこそ正しいグランドエフェクトだとし、そしてロータス79のボディ後部まで覆うパネルの存在はウイングカーではなくマーチ782同様の空洞のサイドポンツーンである、などと力説していた記憶がある。

 ベルギーGPでデビューしたロータス79はもちろんそんなことはなく、前年のロータス78のコンセプトを推し進めた方式であったことはいうまでも無い。

 また、このベルギーGPでのピーターソンの素晴らしいレース展開っぷり(パンクで後退後、追い上げて2位)の記事を目にした私はピーターソンのますます熱烈なファンになったのであった。